次男は自閉症スペクトラムとADHDという発達障害(発達特性)があります。その次男が幼稚園から帰ってきて、急に、「うわーん…悲しい」と言いながらシクシク泣いたときがありました。
『悲しい』と自分の言葉で表現できたことは、成長を感じましたが、「どうしたの?」「なんで泣いているの?」「なにが悲しい?どうして悲しいのかな?」と聞いても答えられません。
発達特性により言語理解が低い次男にとっては、このような質問の意味が分からないのです。本人の泣いている理由が分からないことは、親としてとてももどかしいですし、幼稚園で何があったのかな?と不安な気持ちになります。
どうしたら、このような質問に答えられるようになるのでしょうか。今回は幼稚園や療育機関と連携し、試行錯誤してきたやり方をご紹介いたします。
普段の何気ない日常会話の中で、子どもの苦手と向き合いながら楽しく取り組めるようになりますよ!
「なんで?」「どうして?」「どのような?」などの質問は、オープンクレスチョンと呼ばれています。
このオープンクレスチョンは、Why?What?Who?Where?How?などの文章で、答えが決まっておらず自由に答えられる質問のことです。対義語はクローズドクエスチョンと呼ばれていて、これはYes/Noで答えられる質問を指します。
次男のように言葉の理解が苦手な場合、オープンクレスチョンはとても難しいコミュニケーションになります。なので、「なんで?」と聞いたら「なんで?」、「どれが好き?」と聞いたら「どれが好き?」、「なにが食べたい?」と聞いたら「なにが食べたい?」とオウム返しをされることが多かったです。
では、どのように関われば、「なんで?」「どうして?」「だれが?」「なにを?」「どうやって?」などのオープンクエスチョンに答えられるようになるのでしょうか。
オープンクエスチョンに向けてのスモールステップ
共感し、代弁する
本人が言葉にすることができず、悲しんだたり怒ったりしているときは、まずは共感しましょう。このときは、「そうかー、悲しいんだね」「嫌だったんだね」「痛かったね」と、今の本人の気持ちを代わりに表現し、代弁します。これを重ねることで、気持ちと言葉がリンクし、表現することに繋がります。
クローズドクエスチョンを利用し、選択肢を提示する
本人の頭の中は、日頃インプットした単語や様々な答えがある中で、どれを選んでいいのか分からない状態にあります。なので、こちらでいくつか考えられる選択肢を用意し、選びながら答えていく練習をします。
例えば、「次男くんは何色が好き?」と聞いてみて、答えられない場合は「次男君は、赤色がすき?それとも青色が好き?緑が好き?」というふうに本人が好きと考えられる答えをいくつか用意し、選択しやすいように提示します。
このときは実物を目の前に置き、指さしながらすると、モノと言葉がリンクして理解しやすいです。「おやつは何が食べたい?」と質問をして返答がないときは、実物を目の前に置き、指さしながら「サッポロポテトがいい?ラムネがいい?グミがいい?どれが食べたいかな?」と選択できるように質問し直します。
やりとりが成立したときはすぐ褒める
実物を目の前に置き、指さしながら「サッポロポテトがいい?ラムネがいい?グミがいい?どれが食べたいかな?」と質問したとき、もし子どもが「ラムネ!」と選択できたときは、すかさず褒めます。
「自分で(どれが食べたいか)選べたね」「お母さんもラムネ好き!」「ラムネおいしいよね」「ラムネって決められてかっこいいね」など色んな方向から本人のできたことを褒めて、言葉のやりとりの楽しさ、コミュニケーションの楽しさを感じてもらうことがとても大事になります。
話すことが楽しくなると、会話に自信を持てますし、褒められることでもっとお話ししたい!という意欲にも繋がります。
スモールステップを繰り返す
何度も何度も、クローズドクエスチョンを用いて様々なやり取りを根気よく続けます。一度や二度するだけでオープンクエスチョンに答えられるようになるわけではありません。
オープンクエスチョンで質問してから、本人が分かりやすいクローズドクエスチョンに言い換えることで、答えられる練習を何度も続けます。
クローズドクエスチョンの応用編
例えば、兄弟で遊んでいるとします。次男が「うわーん悲しい…」となったときは、まず「悲しかったんだねぇ、ヨシヨシ」と抱きしめ、共感します。
そして少し落ち着いてきたら、「なにが悲しかったのかな?」「どうして泣いてるの?」「なにがイヤだったのかな?」とオープンクエスチョンで質問します。
ここで、クローズドクエスチョン「どこかで足をぶつけちゃった?」「○○くんも、車で遊びたかった?」と、そのときの状況を見て考えられる選択肢を提示します。
もし、選択肢の中に気持ちの答えがあれば、「車で遊びたかった…」と理由を表現できます。理由を伝える練習になるのです。
何度も繰り返し経験を積む
オープンクエスチョンでのコミュニケーションは、一度や二度で答えられるようになるわけではありません。日々の暮らしの中で、何度も何度も、様々なシチュエーションで選択肢を提示し、練習する中で、本人の頭の中で蓄積され、少しずつリンクし始めます。
発達特性の薄い定型児の子どもが「1を知って1を知る」ことに対して、発達障害がある(発達特性が濃い)子どもは「100(1000)を知って1を知る」くらい、何度も経験することが大切になります。
親だけでは大変な部分もありますので、保育・療育機関と連携し、いろんな環境で本人が経験を積められるようにしていけたら良いですね。
言葉や感情の表現が少しずつ増えてくる
このような取り組みを日々続けていくと、次男の言葉に変化が現れました。ウワーンと泣いたときに、どうしたの?なんで泣いているの?と質問すると、「悲しい…」と感情を伝えられるようになったのです。
そっかぁ、悲しいんだね。どうして悲しいのかな?と聞くと、「○○ちゃんと○○したかった」と話してくれることが、少しずつ増えていきました。
本当に、少しずつの変化なのですが、その成長は嬉しく、言葉でやりとりできることの喜びを私が初めて知ったような感覚になりました。
継続は力なり
親も子どもも、何度も経験しながら学んでいきます。
様々な特性をお持ちの方がおられるので、この方法が絶対!というわけではありません。お子さんに合わせて試行錯誤する上の、参考のひとつにして頂ければ幸いです。
いろんな絵カードが販売されています。言葉のやりとりが苦手なお子さんは、絵カードを使うこと(視覚支援)でやりとりがスムーズに進むことが多いです。
目で見て理解することが得意な視覚優位なお子さんには、声掛けと共に視覚支援が大切になります。視覚支援をする中で理解が増えれば、生活しやすさに繋がり、コミュニケーションの幅が増えてくると考えます。
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